慢性子宮内膜炎という病名は妊活中の方であればご存知でしょう。
簡単に言えば、長時間、子宮内膜が細菌感染にあっているということです。
どんな細菌が感染しているのでしょうか?
場所が生殖器ということで、泌尿器系もしくは腸内の常在菌であると考えられます。
腸球菌、大腸菌、連鎖球菌、マイコプラズマ、ウレアプラズマあたりが考えられています。
子宮の手前に位置する膣にはラクトバチルス属、主にデーデルライン桿菌が存在し、代謝産物の乳酸によって膣を酸性(PH5)に保ち、感染予防をしています。
そこから先の子宮には細菌が入ることはないと考えられていました。
私が昔学んだ時、『子宮は無菌だ』と力強く語っていた先生がいました!!!
正常な子宮内膜には、膣と同様にラクトバチルス属が常在菌として存在していることがわかりました。
その存在が明らかになったのはつい最近の2015年。
米国ラトガース大学の研究者らは、子宮内に善玉菌が存在することを発見し、善玉菌が着床時の免疫に影響を与える可能性を指摘しました。
2016年、米国スタンフォード大学の研究者らが、体外受精での妊娠成功群と妊娠不成功群で善玉菌の量を調べたところ、妊娠不成功群では善玉菌が少ない傾向にあることを見つけました。
子宮内膜における常在菌の種類と割合から、ラクトバチルス属の菌の割合が90%以上を占める人と、90%に満たない人とで、体外受精の結果を調査しました。
この結果を見てみるとラクトバチルス属が90%以下、つまり雑菌が多く繁殖して、子宮内膜に炎症を起こすと慢性子宮内膜炎になり、反復着床不全と呼ばれるようになります。
原因不明の不妊症の3割以上に見られるといわれています。
これを調べる検査をEMMA検査(子宮内膜マイクロバイオーム検査)といいます。
そもそもなぜ子宮内膜に炎症があると妊娠できないのでしょうか?
可能性として考えられるのは、感染状態が続くと、その細菌を排除しようと免疫力が活発になります。
一見良さそうな感じですが、受精卵には夫の遺伝子も半分含まれており、母体からは異物として攻撃してしまう恐れがあります。
通常、着床から妊娠初期はは母体側が免疫を抑え、受精卵を受け入れる反応を示すといわれていますが、そもそも感染症が子宮内膜で起きていればどういうことになっているか想像がつきます。
きっと白血球たちは活発になり、殺気立っているでしょうね・・・。
侵入してきた精子や受精卵を攻撃してしまうことでしょう。
すると着床しない、着床したけど流産したという結果になるのかもしれません。
さて話をもう少し掘り下げます。
通常、私たちが感染症になった場合、自覚症状や血液検査に反応があるものです。
炎症の五大徴候というものがあり、発赤、腫脹、熱感、疼痛、機能障害があるはずです。
食中毒になれば、嘔吐や下痢、発熱、食欲不振などの自覚症状に、血液検査では白血球数、CRPなどが高値になります。
しかし、慢性子宮内膜炎ではそこまで炎症反応は強くありません。
きっと慢性子宮内膜炎を起こす細菌たちは泌尿器系、腸内の常在菌で、場所も近いし、通常の生活をするうえでは支障がないレベルなのかもしれません。
いつ感染したのかもわからないレベルなので、妊娠しない、流産が頻発しているということで検査をするのだと思います。
どこでどうやって感染したのでしょうか?
理由は実にシンプル!!!
・デーデルライン桿菌が弱い
・デーデルライン桿菌を洗い流してしまってしまう
・生理用品の長時間の使用
・抗生物質の高頻度の使用
・清潔ではないものを挿入
・トイレできれいに拭き取らない
・長時間の座った姿勢で繁殖
・性行為中の感染
・出産
こんな日常生活が理由で感染する可能性があるのです。
ということは、誰にでもそのリスクはあるのです。
よく聞く話では、『第1子目は普通に出産したのに、第2子目ができないから検査したら慢性子宮内膜炎だった』と。
日常生活でも感染リスクがあるのですから、出産は感染リスクになるでしょう。
いつなったかも定かでない、場合によっては長期間に渡り感染していたとすると体内の白血球は少しだけ増殖して、リンパ球は慢性子宮内膜炎の原因菌の抗体を作っていても不思議ではありません。
以前ご紹介したTh1/Th2のところで免疫の基本をご紹介しました。
そこも参考にしてみてください。
免疫力は、自分自身の身体が作り出す力です。
常日頃、体調管理を怠らず、メンテナンスをしていきましょう!!!
疲労がたまった、身体が痛い、だるいなどの自覚症状は体からのメッセージです。
メッセージを受け取ったらすぐに鍼灸へ行きましょう。
免疫力は自律神経の仕事、自律神経は鍼灸が効きますよ。
もう一度おさらいしておきましょう。
このように病原菌が侵入することで、白血球が排除、抗原提示、そして抗体産生、免疫記憶をして再度侵入してくる病原菌に対応します。
この過程で、慢性子宮内膜炎を引き起こしている細菌の抗体を作るリンパ球はBリンパ球で、活性化して形質細胞となります。
この形質細胞の表面抗原を調べてみるとCD138を持っていることが分かったのです。
※CD分類:ヒト白血球を主としたさまざまな細胞表面に存在する分子(表面抗原)に結合するモノクローナル抗体の国際分類
※モノクロナール抗体:単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体を指す
※ポリクローナル抗体:動物に抗原を投与して得られる抗体分子の総称
本来、細菌を調べる場合、同定という過程を取りますが、命に影響があるわけでもない細菌たちなので、除菌するだけでよいのです。
そこでCD138陽性細胞を探す検査があり、免疫組織染色法という方法です。
形質細胞にあるCD138抗原に蛍光色素を付けた抗体が結合すれば顕微鏡で染まって見えるのです。
採取した組織を染め、顕微鏡で見て、色がついていればCD138陽性、つまり慢性子宮内膜炎と診断されます。
細かい話は省きますが、直接法、関節法、増感法があります。
もっと正確に細菌名を同定したいというのであれば、ALICE検査をします。
不育症・着床障害の専門医の中には、このALICE検査よりCD138の検査の重要性を謳っている人もいます。
ちなみに、細菌を退治するので抗生物質を飲みます。
ビブラマイシン、フラジールで退治します。
ビブラマイシンはテトラサイクリン系の抗生物質で、グラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアにも強い抗菌力を持ちます。
タンパク質合成阻害で静菌、殺菌作用を示します。
耐性菌が少ないのもよく使われる理由なのでしょう。
カルシウム剤や鉄剤、胃腸薬(アルミニウム、マグネシウム分を含む制酸剤)などと同時に飲むと、この薬の効き目が落ちるようです。
腸肝循環をするため長く血中濃度が保たれます。
フラジールは抗トリコモナス薬です。
トリコモナス原虫以外にも嫌気性菌などによる細菌性の腟症にも有効とされ、ビブラマイシンで除菌できない時に使うようです。
ただですね。
抗生物質で除菌するのは良いのですが、子宮ピンポイントの除菌ではないんです。
当たり前ですが、飲むわけですので、腸内細菌たちも除菌される可能性があるのです。
腸内にはレンガ1個分の細菌がいるといわれていますが全滅しているかもしれません。
ましてや膣や子宮、腸内にラクトバチルス属もいますが除菌されてしまっているでしょう。
さらにラクトバチルス属は嫌気性菌ですから、フラジールでイチコロですね。
とあるクリニックでは除菌後、乳酸菌の膣剤を処方するところもあります。
海外のサプリでは乳酸菌の膣剤も存在します。
除菌された無防備すぎる子宮環境、腸内環境でよいのか疑問が残ります。
やはり除菌後は除菌されてしまった優秀な菌類の復活をしたのち移植に進むほうが良いと思いませんか?
何にせよ、子宮内にしろ、腸内にしろより良い環境が健康の大前提です。
私たち生物は微生物と共生していますので、上手に付き合っていく必要があります。
プロバイオティクスの概念も知っておきましょう。
プロバイオティクスとは、適切な腸内環境を促進し、胃腸管および全身性免疫を刺激します。
消化器系のこの重要な部位を強化することで、プロバイオティクスは以下の症状改善に役立つことが示されています。
・抗生物質起因性の下痢
・尿路感染症
・膣内イースト菌感染症および細菌性腟症
・湿疹
・食物アレルギー
・ガン
・過敏性腸症候群
・炎症性腸疾患
・潰瘍性大腸炎
・クローン病
・旅行者の下痢
・乳糖不耐症
似たような言葉でアンチバイオティクスという言葉があり、これは抗生物質を指す言葉です。
よって抗生物質で除菌することをアンチバイオティクスと言います。
抗生物質のない時代、多くの方は感染症で亡くなってましたが、抗生物質の発見で多くの命が救われました。
その後、抗生物質の過度な使用により耐性菌の問題が出てきました。
本来の形を目指すのであれば、腸内、子宮内、膣内に常在菌が存在する状態を作り上げることが大切です。
サプリでの摂取も可能ですのでご参考にしてください。
日頃からのケアが重要であることには間違いありません。
発酵食品、水溶性食物繊維などの摂取が大切です。
また腸の動きも大切になります。
腸は自律神経によってコントロールされています。
自律神経を整えるためにも、節度を持った生活習慣を送りましょう!!!
鍼灸やマッサージは自律神経を整える働きがありますので積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか?
銀のすずでは少しでもご不安を解消できるようカウンセリングもしっかりと行っております。
何かございましたらご質問ください。
銀のすず